視覚障害者にとって何がバリヤーなのでしょうか?

視覚障害者は信号横断や移動でどのようなことがバリヤーになって困っているのでしょうか?

 一口に視覚障害者と言っても見え方、見えづらさは様々です。
視力が低く遠くのものがぼやけて見えない人、視野が狭く物を見つけるのが苦手な人、明暗への順応が難しく眩しかったり暗かったりする人、色が分からない人など様々です。
ここでは、最も困難な全盲の人を主に対象として考えたいと思います。
 視覚障害を理解する参考ページ  中外製薬のホームページ

信号横断に必要なもの

はじめに、信号を安全に横断するにはどのような情報が必要かを考えて見ましょう。

  1. まず、ここが信号機のある交差点であることが分かり、そして停止する位置が分かる必要があります。
     車道に入り込んでしまわないように、警告ブロックや2㎝以上の段差のある歩車道境界ブロックが必要とされています。
  2. 信号の状態が分かること
     今、進行方向が青なのか赤なのかが分かること。また、赤から青に変わったタイミングが分かる必要があります。
  3. 横断方向が分かること
     横断歩道を外れることなく対岸に到着できることがとても重要です。
  4. 次に、青信号の間に対岸に到着できる必要があります。

    1.  視覚障害者は、視覚以外の感覚から情報を集めて、このような判断を行いながら信号横断を行っています。判断を間違わずに安全に横断するためには、少しでも多くの情報が必要なのです。

      信号が青か赤か分からない

       信号機は点灯している信号の色と位置でその状態を知らせる構造です。
       そのために、信号機の光を感じることのできない視覚障害者は、信号が青か赤かを知ることができないということは容易に理解していただけると思います。
       では、目の見えない人はどうやって信号の状態を判断しているのでしょうか?
       音のない歩行者用信号機では、一番の手がかりは、自動車の走行音です。車が走っている方向は歩行者用信号機も青の場合が多いからです(注1)。
       また、赤から青に変わった合図は、アイドリングストップしていた車のエンジンがかかって走り出すことで判断できますし、周囲に人がいればその足音や話し声で判断することもできます。

      注1 歩車分離式交差点やスクランブル交差点では、全ての方向の自動車を止めて歩行者を通行させる構造のため、自動車の音を判断材料として使うことができません。かえって、走行音がしているときに渡ってはいけないのです。
       このような特殊な交差点には、音響式信号機など視覚障害者でも信号の状態を判断できる装置が必要なのですが、音響式信号機の設置は極めて少なく、「歩車分離式」と掲げられた看板で判断するしか方法がないのですが、これでは、目の不自由な人には伝わりません。

      音響式信号機があれば安全か?

       駅の近くなどで「ピヨピヨ」「カッコー」と鳴っている音響式信号機。
       音がついていれば安全と思っている人が多いと思います。しかし、実は以下のような課題があります。

      ・音が周囲の建物に反響したり、風で流されるため、音の方向が分からないことがある。
      ・そのため、進行方向の信号の音なのか、交差する方向の信号なのか判断できないことがある。
      ・更に、横断を始めても方向が分かりにくいために、対岸まで真っ直ぐに歩けないことがある。
      ・騒音問題で夜間・早朝に音響が止められている信号がほとんどである。
      ・押しボタンで音響をだすタイプでは、押しボタンボックスからの音が小さくて押しボタンがあることが分からなかったり、音の出ていないボックスもある。

      歩道と車道の境界が分からない

       歩道と車道の境界が分からずに、車道に入り込んでしまうことがあります。
       歩道が整備されている道路では、基本的に警告用の点字ブロックと歩車道境界ブロックがあり車道との段差が2㎝取られることになっています。
       しかし、土砂などが堆積したり、車道の舗装がやり直されたりして段差が白杖や足裏の感覚では分からなくなっているところも存在しています。

      ◆2センチの段差は目の不自由な人にとっては、非常に重要な役割があります。
       ①歩道と車道の境目が分かることで、飛び出さない。
        ②盲導犬も段差で境目を区別している。

       但し、この段差は車椅子の方やベビーカーなどには、バリヤーとなるため、車椅子や目の不自由な人も一緒に利用できるバリアフリーな歩車道境界ブロックの施工が望まれています。
       現在では、車椅子と視覚障害者どちらにもわかりやすく、段]により車輪がひっかからないよう、工夫されたブロックも研究開発されています。
       写真左:九州大学みんなに優しい歩車道境界ブロック
       写真右: バリアフリー セーフティブロック/フラットブロック
      歩道の水平部分から車道へ下りる緩やかな勾配の境目に視覚障害者が分で分かる出っ張ったラインがあるみんなに優しい歩車道境界ブロック。  歩道から車道までの緩やかな勾配の途中に3本の出っ張りがあるセーフティーブロック。

       この他にも、各地域で開発されていることが考えられます。情報がありましたらお問い合わせ・ご連絡フォームより情報提供ください。

      真っ直ぐに渡れない

       さあ自動車のエンジンがかかって発進したので、信号が青になったことが分かりました。
       しかし、ここで最後の難関です。真っ直ぐに歩いて対岸まで到達しなければなりません。
       多少でも白線が見えている人はそこから外れないように気をつけて渡りますが、見えない人は手がかりがありません。交差点の内側にずれてしまうと車が走っています、外側にずれればガードレールで歩道にあがれないことになってしまいます。
       2車線道路ではそれほどずれることはありませんが、4車線以上の幅広い道路を真っ直ぐに渡ることはとても難しいのです。

       そこで登場するのがエスコートゾーン!
       みなさん、これご存知ですか。
       カメレオンのように姿を潜ませている横断歩道用の点字ブロックです。
      これがあると、道しるべとなり、目の不自由な人はまっすぐに向こう岸へ渡ることができやすくなるのです。
      ただし、敷設されているところは極めて少ないのが現状です。

      ※どなたか写真を提供ください。私の近所にはありません。

      車の音で判断してはいけない交差点がある!

       前述したように信号の見えない人は、主に自動車の走行音を頼りに信号の状態を判断して横断しています。
       しかし、スクランブル交差点や警察庁が拡大を推進している「歩車分離式交差点」では、全ての方向の自動車を止めて、全ての横断歩道を通行可能にしています。
       これは、左折車が歩行者を巻き込む事故が相次いだために、自動車と歩行者の通行を完全に分けることで人身事故をなくすことが目的で、効果を上げていると言います。

       ところが歩行者用信号機が青の時にはどちらの方向の自動車も停止しているので、走行音で青信号を判断することができません。
       また、自分の進行方向と同じ方向に自動車が走行していたとしても、歩行者用信号機は赤で横断してはいけないのです。歩車分離式交差点であることを知らなければ迷いなく横断してしまいます。

       このように、スクランブル交差点や、歩車分離式交差点では視覚障害者が信号の状態を判断するための音響式信号機などの設置が必須なのですが現状その様にはなっていません。